1964年の大会から半世紀以上の時を経て、本年、再び東京で
オリンピック・
パラリンピックが開催されます。
大会組織委員会が策定した東京2020
大会開催基本計画では、1964年の大会について、当時整備された高速道路や新幹線は、我が国の
高度経済成長の基盤になるとともに、外国人と接する機会に乏しかった日本人が世界をより強く意識する契機となり、「日本を大きく変えた」と評価しております。さらに、同計画では、1964年大会で日本が大きく変わったように、今や成熟国家となった日本が、今度は東京2020大会で世界にどのようなメッセージを発信し、世界の変革を促していくのか、このような大きな課題に対し、問題意識を持って取り組み、「レガシーとして未来につなげたい」としております。
私は、レガシーを築く原動力は、将来への想いであると考えます。一人ひとりがご自身やご家族、暮らしている地域、勤めている会社などの「これから」を考え、各々の立場で行動を起こしていくことが社会・経済の大きな変革につながります。
オリンピック・
パラリンピックが将来について改めて考える機会となり、多くの方の想いを具現化したレガシーが未来に引き継がれることを切に願っております。
現在、区では、基本構想で掲げた区の将来像の実現に向けて、新しい
基本計画の策定に取り組んでおり、昨年11月、12月には
区民ワークショップを開催し、区の魅力や理想像、お住まいの地域で感じている課題などに対し、数多くの貴重なご意見をいただきました。「将来、こんなまちになってほしい」という未来に引き継ぐべき区民の皆様の想いを受け、新
基本計画の策定をはじめ、防災、福祉、
健康増進、産業振興、子育て、教育、
まちづくりなど、様々な分野で力強く施策を推進してまいります。
次世代を担う
子どもたちに関する施策と教育について申し上げます。出産後の母親の身体的な回復や心理的な安定等を目的に実施しております産後ケアにつきまして、これまでの訪問型、日帰り型に加え、令和2年度からは、母親が助産院等に宿泊して産後ケアを受けられる宿泊型のサービスを開始いたします。また、来年度には
私立認可保育所12施設を新たに整備し、
保育サービス定員700人の拡充を目指すほか、0歳児を対象としていた
ベビーシッター支援事業の対象年齢を、0歳児から2歳児までに拡充します。このほか、
子ども家庭支援センター、
児童館等で実施している一時預かり保育の利用料を引き下げるとともに、
私立保育園の定員の余裕を活用した一時預かり事業を開始します。このような施策等を通して、安心して子どもを産み育てられるまちを実現してまいります。
教育に関しましては、児童・生徒の安全・安心な教育環境を確保するとともに、災害時避難所としての機能向上を図るため、令和3年度までに全ての
区立小中学校の体育館及び武道場に空調を整備します。令和2年度においては、小学校27校、中学校6校の整備を進めてまいります。校舎の改築につきましては、令和2年度は既に設計や工事に着手している11校の整備を引き続き進めるとともに、新たに
北糀谷小学校、
馬込東中学校において、改築に向けた事前調査を行います。このほか、不
登校対策や教員の働き方改革など、教育諸課題の解決に向けて様々な取り組みを進めてまいります。
続きまして、福祉に関する施策について申し上げます。国や東京都において、本年4月から、高等教育の無償化や
私立高等学校等の授業料の
実質無償化など、教育費への支援を一層充実することが予定されております。こうした動きと、本区におけるこれまでの実績を踏まえ、
高等学校等就学者に対する奨学金については、貸付型から給付型への転換を進めてまいります。具体的には、一定の条件を満たした方に進学準備のための給付金を支給することにより、ご本人及びご家族の経済的・
心理的負担の軽減を図ってまいります。さらに、
区奨学金貸付金の利用者で、福祉、保育などの資格を有し、区内の
福祉事業所等で活躍する人材に対して、奨学金の返還を減免する制度を創設し、本区における福祉人材の確保、定着も図ってまいります。
また、65歳になる前に発症する
若年性認知症は、働き盛り世代の方に多く、医療や介護に係る支援に加え、就労・社会参加、社会保障、
障害福祉サービスなど、多岐にわたる支援が必要となります。こうしたことを踏まえ、おおた
高齢者施策推進プランでは、
若年性認知症の支援における
事業目標を、「
若年性認知症の人の状態や環境に応じて、今後の生活の相談や
居場所づくりなど、様々な分野にわたる支援を総合的に行う仕組みを構築すること」とし、昨年7月に
若年性認知症デイサービス事業を開始するなど、積極的に取り組みを進めてまいりました。さらに来年度は、23区初となる大田区
若年性認知症支援相談窓口を開設し、
関係機関と綿密に連携しながら、相談者お一人おひとりに寄り添う支援を行ってまいります。
次に、
災害対策について申し上げます。昨年発生しました台風19号による被害を踏まえ、災害への備えをさらに強化するため、
本部体制の強化と
情報発信、
災害対策備蓄物品・設備の充実、
地域防災機能の充実、
治水対策の推進に取り組んでまいります。
本部体制の強化と
情報発信につきましては、災害時対応の中心となる
災害対策本部の活動を円滑にするため、停電に備えた蓄電池を設置するとともに、新たな災害時
情報通信体制を構築いたします。また、災害に応じた避難先を一目で確認できる避難標識の設置や、災害用の
ホームページの充実など、区民の皆様が的確な避難行動をとれるよう、
情報発信を強化いたします。
災害対策備蓄物品・設備の充実につきましては、避難された方々がより安心して過ごせるための
防災備蓄物品等の充実や全
区立小学校への
防災ヘルメットの配備などを行います。
地域防災機能の充実につきましては、区民や事業者の方々に、日頃から防災意識を持っていただくことが重要であることから、引き続きマイ・
タイムライン講習会を実施するとともに、防災に関する
普及啓発物を全戸配布いたします。このほか、既に一部実施しておりますが、災害時に地域の防災拠点となる18
特別出張所の業務継続のための環境整備を充実させてまいります。
治水対策の推進としましては、昨年の台風19号で、田園調布四丁目・五丁目地区に発生した大規模な
浸水被害等の原因究明及び
防災対策方針の策定に取り組んでいるところですが、来年度はその成果をもとに、着実に
防災対策及び
事業展開を図ってまいります。また、緊急時であっても迅速な対応ができる体制を整えるため、仲六郷三丁目に
水防資機材センターを建設いたします。今後も、被災された方が一日も早くふだんの生活に戻れるよう、また、区の防災力の一層の強化を図るなど、区民の皆様の安全・安心を確保するため、全庁一丸となって取り組みを進めます。
ただいま申し上げた大型台風の襲来による度重なる風水害や、昨今の記録的な猛暑など、
地球温暖化の影響と思われる
気候変動が顕在化しております。2018年10月に韓国で開催された
気候変動に関する
政府間パネル第48回総会では、世界の
平均気温が工業化以前と比較して、2017年時点で約1℃上昇し、現在のペースで増加し続けると、2030年から2052年までの間に気温上昇が1.5℃に達する可能性が高いことを示した報告書が承認されました。
さらに、同報告書では、現在の
平均気温と1.5℃上昇した場合の
平均気温とでは、
気候変動などで生じる影響に明らかな違いがあることが述べられております。温暖化がさらに進行することで、より深刻な影響が地球規模で生じることが危惧されます。区は、区民の安全で安心な快適な暮らしを守り、次世代により良い環境を継承するために、
地球温暖化対策を実践するための活動「おおたクールアクション」を区内で活動する団体、事業者、区のそれぞれが主体的かつ連携・協力しながら推進をしてまいります。
少子高齢化を背景に、
中小企業は人材確保が困難になるとともに、後継者が不足するなど、深刻な問題に直面しております。我が国の経済を支える
中小企業が、こうした状況を打開して円滑な
事業承継を進め、蓄積されたノウハウや技術を次世代に引き継ぎ、持続的な成長を実現していくことは極めて重要なことでございます。区は現在、大田区
ものづくり産業等実態調査及び大田区産業の実態に関する
アンケート調査において、
区内中小企業を取り巻く
事業承継に関する課題の抽出、分析を進めているところでございます。また、昨年12月には、区が事務局となり、
東京商工会議所大田支部、
大田工業連合会、大田区
商店街連合会など、
区内産業関係団体を構成員とする大田区
事業承継連絡協議会が発足いたしました。今後は、金融機関などにもご参加をいただき、
オール大田で
ワンストップ支援ができる体制を構築し、
区内事業者の円滑な
事業承継の促進を図ってまいります。
区は本年度、従業員の
健康づくりに積極的に取り組む
区内事業所をおおた
健康経営事業所として認定・表彰する事業を開始しました。
区内事業所の従業員の
健康増進とともに、企業が従業員の
健康管理を経営的な視点で捉え戦略的に実践することで、企業の生産性や収益の向上につながることが期待されます。今年度は、昨年9月2日から11月15日まで募集を行い、審査の結果、19社を認定し、3月18日には
産業プラザで表彰式を行う予定です。表彰式当日には、おおた
健康経営事業所の
ロゴマークの発表も行います。
認定事業所には、従業員の
健康づくりにさらに取り組んでいただけるよう、
健康づくりに関する情報提供なども行ってまいります。区内の
中小企業が従業員の
健康管理にこれまで以上に配慮することで、区民の
健康増進と企業の成長につながるよう、引き続き
健康経営の普及・促進を図ってまいります。
消防庁が公表した「
令和元年版 救急・救助の現況」では、心肺蘇生が行われなかった場合の1か月後の生存率は10%を下回るのに対し、救急現場に居合わせた人が心肺蘇生を行った場合は約18%となっております。さらに、AEDを使用して応急手当を行った場合には50%を上回ります。こうした応急手当の重要性に鑑み、区は現在、区施設に約320台のAEDを設置しております。平成30年度には、地域庁舎と
特別出張所のAEDを屋外に移設するとともに、
多摩川台公園、
本羽田公園、
ガス橋緑地、
多摩川緑地にも設置し、常時使用できる環境を整備してまいりました。加えて、先月27日には、区内で最多の店舗を展開する
株式会社セブン−イレブン・
ジャパンと
AED設置に関する協定を締結し、ご協力いただける115店舗に設置させていただくことになりました。多くの人が利用する身近なコンビニエンスストアへのAEDの設置は、より迅速な救命活動に寄与しますので、今後、
設置場所等について広く区民の皆様に周知をしてまいります。
先ほど
オリンピック・
パラリンピックについて申し上げましたが、昨年12月に
聖火リレーのルートが発表されました。本区では、7月22日に
大森ふるさとの浜辺公園を出発し、第一京浜を通り、
区役所本庁舎に到着するコースを走行する予定となっております。1964年の東京大会では、第一京浜を六郷橋から品川方面へ
聖火ランナーが走り、区民が沿道に駆けつけ、感動と興奮に包まれました。その感動を後世に伝えるため、大田区
総合体育館の近くに
聖火リレー走者の像を現在設置しており、今回、その像の前をランナーが走ることになります。半世紀以上の時を超え、再び感動と興奮の中、
聖火ランナーが本区を走ることを大変喜ばしく思います。
聖火ランナーも順次公表されておりますが、聖火をつなぎ、すばらしい思い出が区民の皆様の心に刻まれるよう、区としてさらに盛り上げてまいります。
羽田空港では、3月29日から
国際線増便のため新飛行経路の運用が開始される予定です。区では、新飛行経路につきまして、これまで国に対し、3回にわたり
騒音対策や
落下物対策を含む
安全対策等について要望し、その結果、低騒音機の
導入促進等、国による各種の対策が講じられております。また、羽田空港の運用が変更されることに伴い、区は書面により新しい運用について国と確認をしております。運用開始後も引き続き
騒音対策や落下物への
安全対策等を徹底するよう国に求めてまいります。
一方で、今回の
国際線増便により、現在、羽田空港において昼間時間帯に1日80便就航している国際線が、1日当たり50便増便されます。羽田空港に来訪される方が大幅に増加し、世界と地域をつなぐゲートウェイとしての羽田の役割がますます大きくなってまいります。
このように、増大する羽田空港のポテンシャルを区の
まちづくりや各種施策に活かすとともに、東京2020大会の開催を契機に、国内外から訪れる多くの方々に区の魅力を知っていただき、区内にヒト、モノ、情報を呼び込むきっかけとなるよう、羽田イノベーションシティのまち開きを7月3日に行います。また、羽田空港跡地の第1ゾーンと第2ゾーンを両翼に見立て、未来に向けて羽ばたく
まちづくりを推進するエリアとするべく、このエリアの名称を「ハネダグローバルウイングズ」といたしました。羽田イノベーションシティの魅力をより多くの方に知っていただけるよう、公民連携による取り組みのもと、先端産業及び文化産業に関して各種イベントの実施や、より効果的な
情報発信等を通じて、新産業創造・発信拠点の形成を進めてまいります。
次に、来年度予算編成が終わりましたので、令和2年度予算案についてご説明をさせていただきます。昨今の国の経済状況に目を向けますと、内閣府が先月発表した月例経済報告では、景気は「緩やかに回復している」との基調判断が示される一方、先行きにつきましては、「通商問題を巡る動向、中国経済の先行き、英国のEU離脱、中東地域を巡る情勢等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に加え、消費税率引き上げ後の消費者マインドの動向にも留意する必要がある」とされております。また、報道によりますと、国際通貨基金IMFの専務理事は、
新型コロナウイルスに関連した肺炎の経済面の影響について、「生産部門やサプライチェーンの混乱を引き起こし、旅行ビジネスにも影響を与えている」、「世界景気に短期的な減速をもたらす可能性がある」と述べ、警戒感を示しました。
こうした中、令和2年度の収支見通しですが、歳入につきましては、法人住民税の交付税原資化の拡大など国による不合理な税制改正の影響、さらには、ふるさと納税制度による特別区民税の流出などによって、一般財源については大きな減収を見込まざるを得なくなっております。また、歳出においては、待機児童対策や超高齢社会に対応するための社会保障関係経費、小中学校など
公共施設の維持・更新のほか、大規模災害を想定した事前対策の強化など、引き続き、多くの財政需要を抱えていることから、歳出に対し、歳入が不足する事態が見込まれます。このような認識のもと、予算編成に当たりましては、区の将来像の実現に向け、区民目線に立った事業の選択・見直し・再構築に全庁一丸となって取り組んでまいりました。
私は、予算編成上の重点課題として四つのテーマを掲げました。一つ目は、「安心して子どもを産み育てられ、未来を担う
子どもたちの成長を応援する取組み」、二つ目は、「生涯を通して誰もが健やかに元気に暮らせる
まちづくり」、三つ目は、「住む人、訪れる人が、安全で安心して過ごせる
まちづくり」、そして、「東京2020
オリンピック・
パラリンピックを契機とした『おおた』の発展に向けた取組み」の四つであります。予算編成においては、これらの課題に優先的に対応することとし、創意工夫のもと、効果的、効率的に財源を配分しました。
その結果、令和2年度一般会計の予算規模は2873億8000万円余で、前年度比約55億円、1.9%の増となっております。このうち歳入については、特別区税が、特別区民税や軽自動車税等の増収を見込んだ結果、前年度比で2.4%増の771億円、特別区交付金は、法人住民税の交付税原資化の拡大などにより、8%減の699億円となっております。一方、歳出では、おおた重点プログラムに掲げた施策を着実に推進するため、673億円余の予算を計上し、現在策定中の新
基本計画につなげてまいります。
この令和2年度予算案によって、私は、区の将来像であります「地域力が区民の暮らしを支え、未来へ躍動する国際都市 おおた」の一層の進展を目指し、区議会の皆様のご協力をいただきながら、予算執行に努めてまいる所存でございます。
続きまして、来年度の予算案に盛り込みました主な事業につきまして、四つの重点課題ごとにご説明を申し上げます。
重点課題の一つ目である「安心して子どもを産み育てられ、未来を担う
子どもたちの成長を応援する取組み」におきましては、子育て・教育についてハード・ソフト両面から充実を図ってまいります。出産や子育てでは、産後ケアの充実などの在宅子育て世帯への支援を拡充させるとともに、待機児童対策の推進など、保育サービスの向上に向けて、保育環境の整備を着実に進めてまいります。教育の分野では、ICT環境の拡充、小中学校の計画的な改築や体育館等の空調整備、不登校等の未然防止・早期発見の取り組みのほか、教員支援員の配置など、教員の働き方改革を推進することで、
子どもたちの学びを支える環境を維持・向上させてまいります。また、高等学校等の進学予定者への給付型奨学金を創設し、幅広く支援をしてまいります。
重点課題の二つ目、「生涯を通して誰もが健やかに元気に暮らせる
まちづくり」につきましては、
健康づくり、高齢者支援・介護予防、生きがいづくりの拠点整備を推進してまいります。
健康づくりでは、おおた健康プランに基づく「キラリ☆健康おおた」、「はねぴょん健康ポイント」事業などの効果的な
健康増進の取り組みのほか、医療相談窓口の開設や東邦大学との共同研究など、医療機関等との連携の充実を図ってまいります。高齢者支援では、引き続き、地域の支え合い推進事業やフレイル予防などに取り組むとともに、人生100年時代における老い支度の推進や成年後見制度利用促進・支援事業により、老後の備えを支援してまいります。また、新たな図書館のスタイルとして移転・再整備する池上図書館をはじめ、生きがいづくり、生涯学習の拠点となる
公共施設の計画的な再整備や全図書館へのICタグシステムの導入などにより、区立図書館の利用環境も大きく向上させてまいります。
三つ目の重点課題である「住む人、訪れる人が、安全で安心して過ごせる
まちづくり」におきましては、
防災対策、環境対策、
まちづくりの取り組みを推進してまいります。安全・安心の確保では、昨年の台風19号の被災状況を振り返り、災害への備えをさらに強化してまいります。仲六郷地区に
水防資機材センターを新たに建設し、より迅速に対応できる体制を整えるほか、企業における防災普及啓発事業に取り組んでまいります。また、倒れない・燃えない
まちづくりの推進や子ども向け防災ハンドブックの作成、
区立小学校の全児童への
防災ヘルメットの配備のほか、ソーラーパネル付き蓄電池を導入し、大規模停電においても
災害対策本部の機能を維持できる体制を整えてまいります。環境面では、屋外の喫煙対策や呑川の水質改善のほか、持続可能な社会の構築に向けて、誰もが
地球温暖化対策を実践するための活動「おおたクールアクション」や食品ロスの削減、給食残渣のリサイクルなどを推進してまいります。
まちづくりに関する取り組みにおきましては、羽田空港跡地の
まちづくりや新空港線の早期実現、蒲田駅・大森駅周辺地区の
まちづくりのほか、池上駅改築と池上図書館の移転を契機に、東急株式会社と連携して進める池上地区の新たな
まちづくりなど、安全で安心して暮らせる魅力あるまちを目指します。
四つ目の重点課題である「東京2020
オリンピック・
パラリンピックを契機とした『おおた』の発展に向けた取組み」では、大会関連事業や大会を機に本区の発展につながる事業を推進してまいります。大会関連事業では、ブラジル選手団の事前キャンプ受け入れを通じた様々な取り組み、まちの装飾や気運醸成のプロモーション、大田区
総合体育館などでの競技の放映のほか、スポーツをする、みる、支えるという観点から、
スポーツ推進事業を充実してまいります。また、大会の開催に合わせた郷土博物館、龍子記念館での企画展、商店街の魅力・賑わい事業、羽田イノベーションシティでの新産業創造・発信拠点の形成などの取り組みを進めてまいります。こうした施策などにより、区の魅力を効果的に発信し、区内にヒト、モノ、情報を呼び込み、区内経済の活性化など「おおた」の発展につなげてまいります。
以上、令和2年度予算案の主な事業についてご説明をさせていただきました。
1月28日に本区の福祉事務所に勤務していた元職員が業務上横領罪の容疑で逮捕されたことにつきましてご報告をいたします。決してあってはならない事件により区民の皆様の信頼を損ねたことを、まずは深くおわびを申し上げます。区は、警察の捜査に全面的に協力し、全容解明に努めるとともに、本件の関係者の方々には丁寧に事情を説明し、対応してまいる所存です。このことについて、昨年、福祉事務所における現金管理体制やチェック機能、現金取り扱いに係る職員の意識調査等に取り組み、金銭管理マニュアルを改定し、全職員に周知しております。今後も、定期的に研修等を実施し、マニュアルに沿った業務遂行を徹底するなど、再発防止を図り、区民の皆様の信頼回復に努めてまいります。
続きまして、中央防波堤埋立地についてご報告申し上げます。本区と江東区との境界線が確定した後、本区に編入される区域の町名を、歴史的沿革を踏まえ、輝く未来にふさわしいものとするため、昨年12月17日から1月31日まで、区内在住、在勤、在学の皆様を対象に広く町名案の募集を行いました。多くの方々から延べ532件もの案をご応募いただきました。厚く御礼を申し上げます。また、町名案の募集に当たり、現地を見てイメージを膨らませていただこうと、今後ますますの発展が見込まれる本区の臨海部地域の区民向け見学会を実施いたしました。こちらは80名を超える方々が参加され、ご好評をいただきました。町名案につきましては、大田区中央防波堤埋立地町名案選考委員会の開催を経て、現在、最終的な選考作業を進めております。案が決定いたしましたら速やかにお知らせをさせていただきます。
最後に、国道357号、東京湾岸道路多摩川トンネルについてご報告いたします。国道357号は、臨海部に面する各都市を結び、羽田空港及び港湾等の物流拠点、オフィス・レジャー施設へのアクセス向上など、人流、物流の効率化を目的とした道路であります。現在の整備状況につきましては、多摩川河口部において神奈川区間と結節しておらず、区内臨海部の慢性的渋滞の一因にもなっております。この間、本区は多摩川トンネルの早期開通を強く国に要望し続け、昨年は私がみずから内閣官房や国土交通省に直接その必要性を伝えたところでございます。その結果、今月6日に国土交通省より多摩川トンネルの準備工事に着手する旨の発表がございました。トンネルは本区羽田空港と川崎市川崎区浮島町を結ぶ計画延長3.4キロで、2車線とのことであります。トンネルの開通により、羽田空港周辺地域及び京浜臨海部へのアクセス性の向上などが図られ、本区におきましても交通渋滞の緩和など大きなメリットが期待されます。区は今後も、早期開通に向けて国や
関係機関への働きかけを続けるとともに、空港臨海部の
まちづくりに取り組んでまいります。
本定例会に提出いたしました案件は、予算関係では先ほどご説明をいたしました令和2年度予算案のほか、令和元
年度大田区
一般会計補正予算(第5次)などの予算案が計8件、条例案35件、その他議案1件、
専決処分の報告議案8件でございます。議案につきましては、いずれも後ほど上程の際、順次ご説明申し上げますので、よろしくご審議、ご決定を賜りますようお願いを申し上げ、招集の挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○塩野目 議長 次に、教育長から教育行政について発言の申し出がありますので、これを許します。
〔小黒仁史教育長登壇〕
◎小黒 教育長 区議会議員の皆様におかれましては、区の
子どもたちの健やかな成長のために、常に心を砕き、ご指導いただいていることに心から感謝申し上げます。また、本日、第1回区
議会定例会におきまして、教育委員会を代表して所信を述べさせていただくことに重ねて感謝申し上げます。
教育委員会では、昨年6月に本区の教育振興
基本計画であるおおた教育ビジョンを策定いたしました。テーマを「豊かな人間性をはぐくみ、未来を創る力を育てる」として、未来社会を見据え、創造的に生きる
子どもたちの資質、能力の育成に取り組んでおります。
さて、この「未来を創る力」を育てる学習とはどのような学習でございましょうか。日々の家庭教育、学校での学習、地域での体験など、これらの学びや体験の積み重ねが、
子どもたちの「未来を創る力」の礎を築く大切な教育であります。その上で、「未来を創る力」を育てるという観点から様々な取り組みが試みられております。本日は、まず、それら「未来を創る力」を育てるための学習の中で、印象に残った取り組みを幾つか紹介させていただきます。
一つ目の学習は、昨年の秋に行われました萩中小学校6年生の「水道に命を懸けた男」という劇です。この劇は、学校の学習発表会で一度演じられ、その後、羽田の地域を語る会という取り組みの中で、羽田地域力推進センターで改めて演じられたものです。内容は、かつて羽田の飲み水に海水が混じり、水屋から水を買っていた時代に、地域のために私財をなげうち、人々の生活改善のために水道を引いた4代目小野藤兵衛さんのお話でございます。
ちなみに、この劇の原作となった「水道に命をかけた男」という絵本は、本区で長く教員や校長を務められた野村昇司先生が書いたものです。野村先生は、大田区の郷土の話を地域の方々から取材し、20冊あまり絵本を出版されています。それらの絵本を読むと、大田区のかつての暮らしや様子を思い描くことができ、大変勉強になります。蛇口をひねれば清潔で安全な水が出てくることが当たり前のように感じている現在の
子どもたちが、困難を乗り越えて水道事業に取り組んだ藤兵衛さんの劇を演じることで、水の大切さや地域を築いてきた人々の思いに気づくことができたのではないかと思います。小学校6年生が演じる着物姿のかわいい藤兵衛さんが腕を組んで思案する姿がとても印象的でございました。
さて、この劇が
子どもたちの「未来を創る力」を育てるという観点で、とてもよいと感じた理由は五つございます。まず一つ目は、羽田のまちの水道についての歴史を地域の方々に取材し、しっかりと学んでいることです。過去についての確かな知識や情報を学ぶことは未来を築く上で重要です。
二つ目の理由は、劇をつくり上げる過程で、
子どもたちの思考力や表現力が十分に活かされていることです。自分たちで脚本を考え、劇にするということは、
子どもたちにとっては大変に創造的な学習です。新たなものをつくり出す創造性こそ、未来を生きる
子どもたちに養いたい力です。
三つ目の理由は、
子どもたちにとって、ともにつくり上げたという感動があることです。うまくいかないこともありますが、練習を重ねて一つの劇をつくり上げる体験は、達成感とともに自信につながり、ともに生きていく意欲となります。
四つ目の理由は、この劇が地域の学習の場である羽田の地域を語る会で演じられたことです。新しくなった羽田地域力推進センターには、地域の方々がたくさん来ていらっしゃいました。劇が終わり、会場の方々から拍手をいただいている
子どもたちは、実にいい顔をしていました。少し照れながらも喜びを感じている子どもらしい表情でした。また、拍手を送る地域の方々もうれしそうでした。このような体験を通して、地域の方々とのつながりが強まり、郷土愛が生まれるのだと改めて感じました。
さらに、この劇が「未来を創る力」となると感じた五つ目の理由は、安心・安全な水を確保することは、現在においても、未来社会においても重要な課題だからです。昨年はアフガニスタンで中村医師が襲撃され、命を落とされるという大変に痛ましい事件が起こりました。中村医師は、医療活動とともにアフガニスタンでの生活改善に心血を注ぎ、100人の医者よりも一本の水道が必要であると水道事業にも取り組んでおられました。この劇は、地球全体の課題であり、SDGsの目標にも掲げられている安心・安全な水をいかに確保するかという課題にも目を向ける機会になったことと思います。そして、水だけではなく、地域や社会の問題を解決するために、第二、第三の藤兵衛さんが出てくることが期待され、将来への希望を感じる学習であったと思います。
次に、
子どもたちの「未来を創る力」を育てるという学習の観点で強く印象に残っている点は、学校の授業が変わってきたということです。来年度から新たな学習指導要領による教育が実施されます。その中の重点の一つが「主体的、対話的で深い学びによる授業改善」です。殊に、中学校、高等学校では、知識注入型の受け身の授業が多く、生徒の考える力や表現する力を高めるために、課題解決型の授業に転換することが求められていました。しかし、昨年参観した中学校の授業は、ほとんどがグループによる話し合い活動を中心として、課題に対して自分の考えを持ち、友達と意見を交換し合いながら考えを深めていくという授業に変わってきていました。
一例を挙げますと、御園中学校の3年生の保健の授業では、将来の健康政策についてグループごとに話し合い、発表していました。感心したことは、まず生徒たちがタブレットや電子黒板を利用して自分たちの考えをわかりやすくプレゼンテーションしていることです。生徒がICT機器を使いこなしていると感じました。また、健康政策の内容も印象的でした。意見の中には、日ごろ運動したり、検診を受けたりしてためた健康ポイントを老後の年金に活かしたらどうかという意見もありました。議会において、はねぴょん健康ポイントについて質疑が行われた翌日の授業であったので、年金に活かすという案もなるほどと思いました。中学生が考えたアイデアは実現が難しい面もありますが、未来社会を生きていく、まさに当事者である中学生が、今から将来の様々な課題について広く考え、意見を持つことは重要なことであると感じました。御園中学校のほかにも、キャリア教育に取り組んでいる矢口中学校では、授業で学んだこと全てが将来役立つ力になると、全ての教科において課題解決的なグループ学習に取り組んでおりました。
このように、「未来を創る力」を育てる教育実践が確実に進められていますが、それをさらに推し進めるために、令和2年度の予算案を立てさせていただきました。その主なものについて、7点申し上げます。
まず1点目は、国際社会でコミュニケーションを図るための英語教育の充実です。本年度、中学3年生全員が公費負担により英検に挑戦いたしましたが、昨年度と比べて目標とする3級に合格した生徒及び3級以上に挑戦、合格した生徒が増えました。来年度は、小学校、中学校とも外国人の外国語教育指導員を活かした外国語授業の時間数をさらに増やし、英語力の伸長を図ります。今年開催される
オリンピック・
パラリンピックで、
子どもたちが外国の方に英語で積極的に話しかけられればと思います。
2点目は、ICT教育の充実です。本区のICT環境の整備は全国的に見ても進んでおります。そのICT環境をさらに充実し、学習がより楽しいもの、より深まりのあるものにしていきたいと思います。令和2年度は、プログラミング教育が本格実施される小学校からさらにタブレットの台数を増やしていきたいと考えてございます。
3点目は、ものづくり教育の推進です。大田区のすぐれたものづくりの技術は世界に誇るものです。ものづくり教育は、試行錯誤を繰り返し、新たなものをつくり上げるというイノベーションの基盤となる大切な資質、能力を育みます。先日の第18回おおたものづくり教育・学習フォーラムでは、多くの関係団体のご協力のもと、6500人ほどの参加者があり、舞台発表、体験コーナー、技術コンテストなど、ものづくりの楽しさを味わうよい機会となりました。このようなものづくりの楽しさを区の全ての
子どもたちに味わわせたいと考え、来年度は未来ものづくり科の研究校を2校指定し、カリキュラム開発に取り組みます。
4点目は、全ての小中学校への教員支援員の配置並びに中学校への部活動支援員の増員です。教員の事務作業や部活動への負担を軽減し、教員が
子どもたちにしっかりと向き合って指導できる時間を確保するための施策です。教育にとって最も大切なことの一つは、教員が丁寧に指導に当たることであり、教員の働き方改革を推進してまいります。
5点目は、不
登校対策事業の推進です。
子どもたち一人ひとりの成長の場や機会を確保できるよう、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーの増員など、取り組みを進めてまいります。不
登校対策事業に取り組んだ中学校において、校内体制の整備や地域を含めた支援体制を充実して成果を上げております。そのような取り組みを全ての学校で実施できるようにしてまいります。
6点目は、体育館の空調設備や校舎の改築など、教育施設、環境の整備です。体育館などの空調設備は、令和3年度までに全小中学校に整備することとし、令和2年度は33校に設置する予定です。熱中症などの健康被害を受けることのない環境とともに、災害時に地域の方々が避難所として安心して利用できる環境を整備します。また、学校校舎の改築は、良好な教育環境を創出し、教育活動を充実させる上で不可欠です。現在、11校の小中学校改築に取り組んでおりますが、来年度は新たに改築事前調査校を2校選定し、引き続き学校施設の計画的な整備に取り組んでまいります。なお、激甚化する自然災害への備えも重要です。令和2年度は全児童の
防災ヘルメットを小学校に配備し、発災時の安全確保を図るとともに、防災訓練などで活用することで児童の防災意識を醸成してまいります。
最後に7点目として、全ての小中学生の
オリンピック・
パラリンピックの競技観戦を挙げさせていただきます。豊かな感性を持つ
子どもたちが、アスリートの競技する姿を目の当たりにすることで、生涯を通じて
スポーツに親しむ素地が培われることと思います。暑さ対策など安全に万全を期し、
子どもたち一人ひとりにとっての
オリンピック・
パラリンピックのレガシーを育んでまいります。
以上、いずれも「未来を創る力」の育成にかかわる重要な施策でございます。よろしくご理解いただければ幸いに存じます。
るる述べさせていただきましたが、最後に私が印象に残りました中学生の作文を一つ紹介させていただきます。それは、中学3年生が租税教育の授業を受け、その後、公費で英語の検定を受けることについて、どうしてだろうと疑問を持ち、大田区の
ホームページで調べて考えを述べたものです。その生徒はあまり英語が得意ではなかったようです。「グローバル化に対応できる英語力を身につけ、学習の成果を確認する。未来の国際都市おおたを支える人材を育成するといった目的で、英検の実施が行われていることを知りました。詳しく調べる前は、英検について少しネガティブな考えだったけれど、未来の大田区を、社会を支える私たちに期待が込められていること、身近で役に立つ資格を取れる機会を与えてもらえていることを感じ、しっかり勉強して英検を取ってみようと思いました」と考えが述べられていました。
教育委員会といたしましては、施策の意図を中学生自身が理解し、意欲を持ってくれることは本当にうれしいことです。教育委員会は、「
子どもたちの今を輝かせることが未来の社会を輝かせること」との考えのもと、未来社会を見据え、
子どもたち一人ひとりの心に届く教育施策を推進してまいりたいと存じます。区議会議員の皆様の一層のご理解とご指導をお願い申し上げて、所信とさせていただきます。
長時間ご清聴まことにありがとうございました。(拍手)
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○塩野目 議長 事務局長に諸般の報告をさせます。
〔鴨志田事務局長朗読〕
1 大田区
議会定例会の招集について
2 議案の送付について
3 執行機関の出席について(2件)
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31総総発第12328号
令和2年2月7日
大田区議会議長 塩野目 正 樹 様
大田区長 松 原 忠 義
大田区
議会定例会の招集について(通知)
令和2年2月7日付け大田区告示第60号により、令和2年第1回大田区
議会定例会を下記のとおり招集したので通知します。
記
1 期 日 令和2年2月17日
2 場 所 大田区議会議場
――
――――――――――――――――――
31総総発第12328号
令和2年2月7日
大田区議会議長 塩野目 正 樹 様
大田区長 松 原 忠 義
議案の送付について
令和2年第1回大田区
議会定例会に付議する次の議案を別紙のとおり送付します。
第1号議案 令和2
年度大田区
一般会計予算
第2号議案 令和2
年度大田区
国民健康保険事業特別会計予算
第3号議案 令和2
年度大田区
後期高齢者医療特別会計予算
第4号議案 令和2
年度大田区
介護保険特別会計予算
第5号議案 令和元
年度大田区
一般会計補正予算(第5次)
第6号議案 令和元
年度大田区
国民健康保険事業特別会計補正予算(第1次)
第7号議案 令和元
年度大田区
後期高齢者医療特別会計補正予算(第2次)
第8号議案 令和元
年度大田区
介護保険特別会計補正予算(第2次)
第9号議案 職員の
特殊勤務手当に関する条例の一部を改正する条例
第10号議案 大田区
積立基金条例の一部を改正する条例
第11号議案 大田区
手数料条例の一部を改正する条例
第12号議案
大田区立消費者生活センター条例の一部を改正する条例
第13号議案 大田区
区民活動支援施設条例の一部を改正する条例
第14号議案 大田区
特別出張所付属施設条例の一部を改正する条例
第15号議案
大田区立区民センター条例の一部を改正する条例